【インタビュー】傳智之氏(技術評論社書籍編集部):『サラリーマンが出版するための100の方法』vol.05 | 鹿田尚樹の「読むが価値」

2009年02月24日

【インタビュー】傳智之氏(技術評論社書籍編集部):『サラリーマンが出版するための100の方法』vol.05

出版は個人にとってのIPO

『レバレッジ人脈術』本田直之


「個人×ブランド化」時代に、
サラリーマンでも「自分をブランド化」する方法。

それが「出版」です。

このシリーズも第5回目です!

今回も、サラリーマンでありながら出版を実現する方法を編集者の方に、インタビューをしてきました。

『サラリーマンが出版するための100の方法』vol.05です。


その第5回目の方は・・・

問題は「数字センス」で8割解決する問題は「数字センス」で8割解決する
望月 実

by G-Tools


読むが価値でもお馴染みの一冊を生み出した・・・

技術評論社 書籍編集部の傳智之氏です。


ということで、いってみましょう!



THE・インタビュー:


鹿田:

傳さん。今日は宜しくお願いします


傳氏

「こちらこそ、お願いします」



「編集者が最初の企画でみるポイント、考えるポイント」


鹿田:

最近はサラリーマンでも出版を目指す方が多くなってきましたが、
編集者としての傳さんが、最初の企画案の段階で見るポイントなどを、
教えていただけますでしょうか?


傳氏

「まずは、伝えようとする姿勢ですね」


鹿田:

伝えようとする姿勢、つまりはどういうことでしょうか?


傳氏

「そうですね」
「これはこういう企画です、と自己完結の説明で終わるのではなくて、この企画がなぜ必要なのかとか、なぜこれを書かなくてはいけないのかを伝えようとされているかどうかということです」
「読み手にとって何を伝えたいのかというのが、明確なほうが好感が持てます」


鹿田:

なるほど


傳氏

「自分がどうしたい、ではなくて、他人に何がしてあげたいのか」
「これを感じられるかどうか、というところですね」


鹿田:

自分が何が書きたいかということよりも、
読んでいる人に何を伝えたいかが大切、ということですね


傳氏

「そうですね、その気持ちが強い人はワンモアサプライズの精神があって、売ることへの意識も高いと思っています」


鹿田:

ワンモアサプライズの精神とはどういうことですか?


傳氏

「編集者はよく一番最初の読者と言われますが、著者にとってまず大切なのは最初の読者、つまり編集者のこころを掴むことだと思います」
「その手段は企画の切り口やタイトルかもしれないし、企画を出してくるスピードかもしれませんし、いろいろありますが・・・」
「何かサプライズを与えられる人、与えようとする人はすごく印象がよくなりますね」
「色々考えてくださる人なんだ、という気持ちと意志が伝わりますから」

傳氏

「2つめは、人としての魅力ですね」



鹿田:

人としての魅力というと、たとえばプロフィールの内容とか?


傳氏

「そうですね、プロフィールですね」
「企画が良くて、プロフィールが良くて、ワンモアサプライズがあれば、グラっときちゃいますよね(笑)」


鹿田:

グラっと(笑)そうなんですかぁ
具体的にはどんなことが書いてあるといいんですか?

傳氏

「自分はどういう人間で、なぜこの本を書くのにふさわしいか、が感じられるといいですね」


鹿田:

なるほど

3つ目はなんでしょうか?


傳氏

「3つ目は、テーマのタイミングです」
「書く内容が良くても、タイミングで売れ行きがまったく変わります」
「今流行っているから良いとか、今売れてないから今度売れるかとか、解釈はいろいろありますが・・・」
「出版業界では売れない、と言われていたいわゆる人脈本も、突然売れ始めてからチャンスが広がりましたし」
「人ありきの企画、つまり絶対にその人にしか書けない企画か、テーマありきの企画かによっても変わると思いますが、タイミングは売れ行きの大きな割合を占めますね」


鹿田:

タイミングはもちろん重要ですね

ただ人ありきか、テーマありきかということでも変わるんですね


傳氏

「そうですね」
「今は企画書のポイントで話したわけですが・・・」
「やっぱり大切なのは企画を出している"人"だと思います」


鹿田:

はい


傳氏

「一緒に本を創ってビジネスをするわけですから、自分が好きになれる人というか、人の相性も大事なんですよね」


鹿田:

結局は「人」というところが、傳さんらしいですね(笑)



「お断りする確率が高くなる企画」


鹿田:

それでは、次のテーマに!
お断りする高くなる企画、そんなものはありますか?


傳氏

「ありますよ」
「まず1つ目は、既存の本のコピーにしか見えない企画ですね」
「類書との違いがわからない企画というのは、出版社から見ても、書店さんから見ても価値が感じられないですから」
「もちろん読者の方々にとっても同じような内容の本には、あまり価値が見えてこないと思います」


鹿田:

なるほど、他にはありますか?


傳氏

「2つ目は・・・」
「まとまってるし、分量もそこそこあるから本になるでしょ。という意図が透けてみえてしまう企画ですね」
「本になるためにはある程度の分量が必要にはなりますが、分量を稼ぐのが目的ではないですよね。大切なのは、その企画の価値がどこにあるか、ですから」


鹿田:

分量ではなくて、新しい価値の創出があるかということですね


傳氏

「そうですね」
「つづいて、3つ目がオレオレ企画ですね」


鹿田:

オレオレ詐欺みたいな(笑)
何ですか、それは?


傳氏

「その名の通りなんですが・・・」
「オレは本を出したいんです!っていうだけの企画ですね」
「アピールしたいのはわかるんですが、それが空回りして自己中心的にしか見えないというか・・・」
「この企画、本当にお金を払って読んでいただく価値があるか?と客観的に考えていただきたいですね」


鹿田:

身に覚えが・・・(汗)
自分を見つめながら、客観的に自分の価値を見極めないといけないですね



「著者になるために必要なもの」


鹿田:

それでは、次のテーマに!
著者になるために必要なもの、これはいかがですか?


傳氏

「1つ目は、好き・イヤ・なんで」


鹿田:

好き・イヤ・なんで・・・ですか?


傳氏

「これは個性ということです」
「よく、企画に個性・オリジナリティがないと言われて却下されることがありますが・・・」
「じゃあ個性ってなんだよ!といわれたとき、具体的な指針になるのがこの3つだと思っています。何が好きとか、何が嫌いだという世界観、それから理由ですね」


鹿田:

なるほど


傳氏

あと、個性を考えるうえで重要なのが、共感よりも違和感だと思います。


鹿田:

共感より違和感・・・ですか?


傳氏

「たとえば、私もこんな本が好き、私もだれだれさんが好き、というのは個性かもしれませんけど、普通の好き嫌いにすぎないですよね」
「心に刺さる本を書ける著者の方は、自分が何を疑問に思っていて、何を好きで、何が嫌いなのか、突出した主体性を持っていらっしゃいます」
「また好き嫌いの、その理由を突き詰められる人でもあります」
「ほかの人と同じものが好きだったり、人に共感されるのは大事なのですが、そうした感情はえてしてぼんやりした表現になってしまうことが多いんですよね」
「ならば、自分がほかの人からみて異質だと思う考えとその理由を突き詰めるほうが、自分の個性をわかりやすく伝えられると思います」



鹿田:

なるほどですね

では、2つ目はどうですか?


傳氏

「2つ目は、開いた熱意ですね」


鹿田:

それはどういうことですか?


傳氏

「自分の為の熱意というのは、長続きしません」
「そういう意味で、外に開いた熱意ということで、誰かの為に本を書くという情熱です」
「社会のためにというか、人のためにという私心のない熱意が必要だと思います」


鹿田:

私心のない熱意ですか(ギクッ!)


傳氏

「本を書くという作業は、思った以上に労力が必要です」
「そういった意味でも、自分のために・・・だけでは最後のふんばりが効かない部分があるのです」


鹿田:

自分のためという私心だけでは書ききれない人が多いってことですね


傳氏

「そうなんです。実際に多いんですよ(笑)。たとえ書ききれたとしても、文章が独りよがりで共感できなくて、最後まで形にならなかったり」


鹿田:

それでは3つ目はなんでしょう?


傳氏

「3つ目は、考える時間ですね」
「考える時間をどれだけ、確保できるかということです」
「自分の書きたいことや、自分の気持ちを突き詰めるのは時間がかかります」
「でも、本業がある人は時間がありませんよね」
「文字にするために、時間がかかることをわかった上で出版を考えていただきたいです」


鹿田:

なるほど


傳氏

「本というのは、思考の結晶だと思っています」
「思考が文字通り、結晶となるまで考え抜かないと良い本にはなりません」


鹿田:

サラリーマンや本業があると、時間というのがネックですよね


傳氏

「そうですね」
「その前提を受け入れたうえで、1日の中でどれだけ考える時間を作り出せるか、つまり投資できるか」
「忙しい中で考えるからこそ、臨界点を突破できると思って取り組んでいただきたいです」


鹿田:

なるほど、4つ目はなんでしょうか?


傳氏

「4つ目は、人間を描く力です」
「自分っていう人間をどれだけわかっているのか」
「そして、それを文字にできるか」
「自分の考えはこういう理由でこうなんですという、自分の思考のプロセスを文字にできるということです」
「その人らしさは思考や行動の細かいプロセスにこそ出てきますが、そういうところまで文字に落とし込んで欲しいですね。その部分こそ著者の個性ですし、個性がいきいきと描かれているからこそ読者の共感が得られるので」
「たとえばイチローさんは、まさしくそれが体現できている人の1人だと思います」


鹿田:

イチロー選手は自分の思考の言語化力が素晴らしいですもんね


傳氏

「最後5つ目ですが、捨てる勇気です」
「良い本を作るためには、原稿を捨てなくてはならないときがあります」
「勝間和代さんも、山田真哉さんも、ベストセラーとなった本の著者は、どなたも相当な量の原稿を捨てています」
「私の担当している著者の方も、大分原稿を捨ててます(汗)」
「著者にとって自分の原稿は子供のようなものですから、怒られることもよくありますが・・・」


鹿田:

そうなんですか(笑)


傳氏

「もちろん、余計なやり直しを当たり前と思ってはいけないですけどね」
「やはり、より良いものを生み出すために捨てる勇気も必要になってくるのです」
「過去の時間を捨てて、より大きな価値を生み出す可能性に時間を投資する」
「こうやって良い本ができていくのだと思います」


鹿田:

捨てる勇気、自分が書いたものを更に上回るための投資ですね

まだまだ鹿田に足りない部分が見えてきました(汗)

今日は本当に貴重なお話をたくさんしていただき、
ありがとうございました!


傳氏

「ありがとうございました」


「まとめ」


■編集者が最初の企画でみるポイント、考えるポイント
1 伝えようとする姿勢(ワンモアサプライズの精神、売ることへの意識)
2 人としての魅力
3 テーマのタイミング

・いきなりきれいにまとまってなくても大丈夫(実績より将来性で判断)
・プロフィールに「自分はどういう人間で、なぜこの本を書くのにふさわしいか」が感じられるといい
・人ありきの企画か、テーマありきの企画かによっても変わる


■お断りする確率が高くなる企画
1 コピーにしか見えない企画(類書との違いがわからない企画)
2 「まとまってるし、分量もそこそこあるから本になるでしょ」という意図が透けてみえてしまう企画
3 オレオレ企画

・「これなら売れる」は99%正しくない、「これでも売れない」は99%正しい
・「この本、本当に必要か?」と考える


■著者になるために必要なもの
1 好き・イヤ・なんで(共感より違和感)
2 ひらいた熱意
3 考える時間
4 人間を描く力
5 捨てる勇気



**********************


インタビューを終えて・・・

今回は初めて「一献」傾けながらのインタビューでした(笑)
(お酒飲みながらってことです・汗)

技術評論社さんにも初めて訪問してきたのですが・・・

その名の通り「技術書」が多いこと多いこと(汗)


傳さんが昔相当な労力を使って編集した「事典」系なんかをはじめ・・・

ビジネス書以外の本も多く見せていただきました。


インタビューでは載せられなかったポイントも、かなりエッセンスが濃いお話があったので、いくつか要点をご紹介!


■「出版は個人のIPO」の不都合な真実
・出版を目的にしないでいただきたい
・一生で3冊は出していただきたい
・「資産くいつぶし型出版」に気をつけていただきたい
・出版社はベンチャーキャピタル


■編集者の選び方
・出版社よりも編集者
・「著者の力がすべて」は真実でもあり言い訳でもある
・社外に顔を出す編集者をねらう
・本は「作品」と「商品」のあいだ
・編集者の弱点とうまくつきあう(性格、得意分野、会社)


■著者の方にお願いしたいこと
・好きな本、嫌いな本を共有していただきたい
・「こんな本がなんで売れてるんだ?」という疑問を深堀りしていただきたい
・「読者にとって」で話していただきたい
・編集者を信じつつ、鵜呑みにしないでいただきたい(編集者より読者に媚びる)
・出版までの3つのデスバレー(企画が通るまでの谷、編集者とやりとりするうえでの谷、創ることと売ることの谷)をがんばって乗り越えていただきたい
・1冊目こそ「品質重視」で考えていただきたい
・子どもに誇れる本を書いていただきたい


本当にたっぷりの時間で、かなりのお話を聞かせていただきました!

「読むが価値」の夜の部では、結構頻繁にお付き合いさせていただいている傳さんです(笑)

社外にどんどん出る編集者ということで・・・

以前にインタビューに登場いただいた・・・

滝啓輔さん(第二回)
千葉正幸さん(第三回)
和田史子さん(第四回)

と非常に共通点の多い編集者のお1人です!

売れっ子編集者は「社外によく出る」ということで・・・

出版を目指す方もぜひそんな方を探してみては?

ということで、今回は・・・

技術評論社編集部・傳智之さんのインタビューでした!

DSCF4120.JPG



【関連記事】

1. 斉藤芳宜さん(著者)
2. 滝啓輔さん(日本実業出版社)
3. 千葉正幸さん(ディスカヴァー21)
4. 和田史子さん(ダイヤモンド社)

タグ:傳智之

この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。